2020年10月16日
2020年の住宅における省エネ仕様の義務化
1.これまでの考え方—スマートハウス
・防災対策を住宅へ
2011年3月11日、東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所事故による計画停電や電力不足をきっかけに「スマートハウス」への注目が高まりました。
スマートハウスの意義は震災をきっかけにそれまでのスマートハウスは
「CO2排出量削減で地球環境保護に貢献」だけでなく、
「災害時のエネルギー自給自足による備え」も加わり、一段と切実さを増しました。
スマートハウスとは、エネルギーを節約する
(省エネ=高断熱・高気密+太陽光の利用+自然換気など)
つくる(創エネ=太陽光発電+燃料電池+太陽光温水器など)・ためる(蓄エネ=蓄電池)を持った住宅であり、
省エネ、創エネ、蓄エネを自動制御する「HEMS(住宅用エネルギー管理システム)」によって、
商用電源やガスなどの使用量の削減、電力ピーク時間の変動、といった最適制御が可能になります。
これまで弊社は住宅の基本性能として、
断熱等級4、耐震等級2(建築基準法=等級1、最高等級3)以上で設計してきました。
創エネ、畜エネに関しては予算の都合もあり、創エネ(太陽光発電)は約半分の棟数で計画し、
畜エネに関しては特に高価なものになり、計画上話題には上るのですが、実施までには至っていません。
図:HEMS概念図 パナソニックホームページより引用
□大震災により停止したライフラインの復旧期間
電気 水道 都市ガス
東日本大震災※1 3日で約80% 約3週間で約80% 約1ヶ月で約80%
8日で約94% 約1ヶ月で約94% 約2ヶ月で約90%
阪神淡路大震災※2 6日で倒壊家屋等を 42日で仮復旧完了 6日で倒壊家屋等を
除き復旧完了 91日で全戸通水完了 除き復旧完了
東京湾北部大震災 概ね1週間程度 概ね1ヶ月以上 概ね1〜2ヶ月程度
※1東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告書参考図表集(平成23年9月):中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」
※2阪神・淡路大震災下水道施設災害の記録(平成8年3月):兵庫県土木部下水道課
※3首都直下地震等による東京の被害想定報告書(平成24年4月):東京都防災会議
2.これからの省エネ住宅:2020年の義務化、そしてZEH
2020年には一般の住宅に対する義務化も実施する方向で検討が進められています。
2020年に予定される省エネ基準の義務化において、
すべての新築住宅がクリアしなければならないのが「断熱等級4」であるので、
現在でも弊社の考え方はクリアできています。2020年にはそれにプラスして、
省エネ型の設備機器を搭載していることが求められます。
図:国土交通省パンフレットより引用
3.ZEH
ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の頭文字をとった略称で、
エネルギー消費量が正味ゼロの住宅のことをいいます。
「ゼロエネルギー住宅」や「ゼッチ」と呼ばれることもありますが、同じ意味となります。
「ゼロエネルギー住宅」といいましたが、
人間が生活している以上、住宅で消費するエネルギーが完全にゼロになるということはありません。
ここでいう「ゼロ」とは、「完全にゼロ」ということではなく、
「正味ゼロ」つまり「プラスマイナスゼロ」という意味です。
省エネをしっかり行うことでエネルギー消費量をできるだけ少なくした上で、
それでも必要となるエネルギー消費量と同じ量のエネルギーを自ら生み出すことができる住宅を、ZEHと呼びます。
具体的には、壁の断熱や、断熱性能の高い窓を導入することで、しっかりと断熱を施し、
エネルギー消費量を基準値以下に抑えた住宅にしなければいけません。
エアコンや給湯器など、エネルギーをたくさん消費する住宅設備の省エネ性能を高める必要があります。
その上で、太陽光発電システムやエネファームといった、
創エネ設備を設置し、エネルギー消費量以上のエネルギーを生み出す必要があります。
つまり、これからは建物だけではなく、
住宅設備=冷暖房機器、給湯器、換気設備、照明設備、太陽光発電などの性能が問われることになります。
2020年の義務化ではありますが、
あと2年、あっという間のことです。
現在計画している住宅でもこの考えを考慮して計画をしています。
村上治彦:CASBEE戸建評価員 ※CASBEE:建築物総合環境性能評価システム
カテゴリ:コラム